研究課題
インドネシア国は大小多くの島嶼からなり、なかでもカリマンタン(ボルネオ)島は単独でも日本の本州の3倍の面積を有しており、いわゆるスンダランドの中心をなし、オランウータンを初めとして多くの霊長類を擁している。霊長類研究所のアジア研究グループは1973年よりこの国で調査研究を継続発展させてきた。しかしながらそれらは総てカリマンタン島の外の世界であった。平成8年度調査はいわば、アジアグループにとって残された最後の地域の、そして予備調査と位置づけ多くの専門分野からの参加を求めた。第一班は竹中、毛利、平井、バンバンで構成し、同島の広い地域での試料採取を目的とし、パンカランプン、バリックパパン、バンジャルマシン等の都市及びその近郊で能率を考え、テナガザル、プタオザルのペットからの形態学的資料、血液試料の採取を行った。延べ80頭に及ぶそれらの試料については、現在形態学的分析、染色体分析、ミトコンドリアDNAのチトクローム遺伝子の塩基配列を決定中である。第二班の松村は東部カリマンタンにおいて、野生霊長類調査のための良好なフィールドの発見に努めた。結果カニクイザルはどの地域でも村落のそばで比較的たやすく観察が可能であるが、プタオザルはアクセスが困難であること、テングザル、シルバ-ルトンも河川沿いの地域で観察が可能であることを見いだした。第三班の味覚の嗅覚の嗜好性に関する実験心理学的研究班では、マカク種において苦味・渋味への耐性に関して差違のあること、またマカク種において状況に合わせ自発的に道具を使い分けることを発見し、その道具使用に関する実験的分析を行った。第四班の鈴木はオランウータンの社会性に関する継続調査を行った。以上本年度の調査は予備調査の性格をおびているが今後の調査計画について立案中である。
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