研究課題
1996年11〜12月に実施した南京博物院考古研究所における調査、研究によって、本年度は漢代の2遺跡・7体、春秋戦国期の4体、新石器時代(主に〓〓遺跡)の6体の人骨についてデータ採取を終えた。その結果、漢代の人骨については、北部九州のいわゆる渡来系弥生人骨とかなり強い類似性のある可能性が明らかとなった。また春秋戦国期の人骨にもやはり日本の北部九州弥生人との強い類似性が見て取れ、少なくともこの江南地域に春秋戦国期から漢代にかけて渡来系弥生人に類似した集団が居住していた可能性が初めて明らかになった。日本の稲作文化の源流とされる同地域に、こうした形質の人々が実在したことになると、渡来系弥生人の起源、ひいては日本人の形成に関する長年の議論に大きな影響を与えるものとなろう。また本年度の調査によって、〓〓遺跡などの同地域の新石器時代人骨はこれら後世の人骨とは明らかに異なる特徴を示し、同地方においてこの間にかなりの時代変化の起きていることも判明した。さらに、抜歯風習について、江南の馬家浜文化期の他の遺跡でも、〓〓遺跡と同形式で抜歯が施行されていたことが明らかとなり、その形質とともに、地域的、時代的変遷の追跡が新たな興味ある問題として浮かんできた。ただ残念ながら全体的にまで資料が不足しており、今後とも収集に努める必要がある。そのため、平成9年度からは、上海博物館とも新たに共同研究を実施する予定であり、さらに実施した情報、分析データの入手が期待される。
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