研究課題/領域番号 |
08041152
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中橋 孝博 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 教授 (20108723)
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研究分担者 |
李 民昌 南京博物院, 考古研究所, 助教授
松村 博文 国立科学博物館, 人類学研究部, 研究員 (70209617)
篠田 謙一 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (30131923)
分部 哲明 長崎大学, 医学部, 講師 (50124847)
山口 敏 国立科学博物館, 人類研究部, 名誉教授 (80000115)
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キーワード | 弥生人 / 渡来人 / 日本人の起源 / 縄文人 / 古人骨 / 江幸地方 |
研究概要 |
本年は最終年度に当たるため、当初、中国では主に報告書作成のための研究討議を行う計画であったが、予想以上に資料が集まったため、日中の研究者による最終的な討議は、中国側研究者を日本に招聘した上で行うこととし、昨年同様に中国現地での調査に重点をおいた。ただし予算との関係で、日本からの派遣は、現地での調査が不可欠な3人(中橋、分部、松村)に限定し、DNA分析用資料(篠田担当)、並びに性、年齢鑑定(山口担当)はこの3人が代行した。 今年度新たに追加された古人骨は、新石器時代:6体(劉林他)、春秋戦国時代:1体(梁王城)、漢代:3体(胡場)である。'96、'97年度の資料と本年度の資料を一括した上で、改めて各自分担の比較分析を実施した。その結果、まず春秋戦国期〜漢代の資料の計測学的な分析で(男性18体、女性10体)、北部九州弥生人との明瞭な類似性が確認された。同時に、江南地方の新石器時代人は、後世の春秋〜漢代人とはもとより、華北の同時代人、日本の縄文人とも異なる形質を持つことが確認された。つまり、江南地方ではこの間に住人形質に激しい変化が起きたことになり、以前から指摘されていた考古学的な変化と併せて、その要因が改めて問われることとなった。春秋〜漢代人と渡来系弥生人との類似性は、DNA分析でも3体(梁王城2体と、胡場1体)で確認され、頭蓋小変異、四肢骨の分析でもほぼ同様の結果が得られた。ただ、歯については、江南の漢代人はすでにかなり進化した様相を見せ、むしろ春秋期の人骨のほうが弥生人との強い類似性を示した。 まだ、全体的に資料数が不足しているものの、以上の成果はこれまで知られていなかった先史江南地方の人々、特に春秋〜漢代という、日本の弥生平行期に、北部九州弥生人と良く似た形質の人々が居住していた事実を初めて明らかにするものであり、積年の課題である渡来人の源郷問題に関して、従来の諸説に修正を迫る新知見になるものと考える。
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