アジアの多雨林におけるフタバガキ科とブナ科のニッチ分化

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08041155
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 山倉 拓夫 大阪市立大学, 理学部, 教授 (10089956)
• 研究分担者: SARAYUDH Bu タイ森林局, 研究員 ; KRIAGSAK Sr メジョ大学, 環境学部, 講師 ; PRICHA Dhan カセサート大学, 林学部, 助教授 ; SYLVESTER T サラワク森林局, 主任研究員 ; PONGSAK Sah カセサート大学, 林学部, 教授 ; 高橋 智 大阪大学, 理学部, 助教授 (70226835) ; 渡辺 幹男 愛知教育大学, 教育学部, 助手 (30270995) ; 田村 実 大阪市立大学, 理学部, 講師 (20227292) ; 大久保 達弘 宇都宮大学, 農学部, 助教授 (10176844) ; 原 正利 千葉県立中央博物館, 学芸員 (20250144) ; 神崎 護 大阪市立大学, 理学部, 講師 (70183291) ; 柴田 耕造 大阪市立大学, 理学部, 教授 (30047229)
• キーワード: フタバガキ科 / ブナ科 / 地形 / 林冠構造 / ニッチ分化 / フロラ / タイ / サラワク

研究概要

サラワクの52ha調査区で得られた地形と森林群集の調査データを解析し、地形データの定量的評価方法を開発すると共に、森林構造の地形にともなう変化を明らかにした。この解析結果はすでに学会誌に発表した。また、フタバガキ科の地形ニッチ分化の様子を定量的に解析した。その結果、フタバガキ科の内部では明瞭な地形ニッチの分割パターンの存在し、多種共存系の維持にニッチ分化が重要な要因であることが判明した。
平成8年7月から8月にかけてタイ、ドイインタノン国立公園の内部で調査地選定を行った。標高1000mから山頂(2565m)までのブナ科の混交する山地林を観察した結果、最も種多様性が高く、原生林の状態を維持している、標高1700m地点の下部山地林に調査区を設置することを決定した。
平成8年12月から平成9年3月にかけての調査期間中に、タキオメータとトラバースコンパスを使用した精密測量によって、15haの調査区の設定と、地形測量を行った。この測量データをもとにして、今後地形的なニッチ分化の解析に必要な調査区内に精密な地形図を作成した。また同期間中に調査区とその周辺で、山地林のフロラを明らかにするために、樹木を中心とした植物の採取を行い、1000点以上の標本を採取した。また、採取標本の同定をバンコクの森林局標本庫において行い、約20%の標本の同定を終了した。現在までのところ、ブナ科10種、クスノキ科15種を始めとする48種について同定を終了した。一部のしゅについては、分子遺伝学的分析をおこなうための試料も同時に作成し、日本に持ち帰った。調査区設定後、調査区の一部において、毎木調査と林冠構造の測定のための予備的調査を行い、来年度の本格的調査のための調査マニュアルの作成を行った。

研究成果

• [文献書誌] T. Yamakura et al.: "Forest structure of a Tropical Rain Forest at Lambir, Sarawak with Special Reference to the Dependency of its Physiognomic Dimnsion on Topography" Tropics. 6 (1・2). 1-18 (1996)
• [文献書誌] M. Kanzaki et al.: "Long-Term Ecological Research Site of Doi Inthanon National Park, Thailand" Tropics. (発表予定).
• [文献書誌] T. Mizuno et al.: "Topography and niche differentiation of a tropical montane forest community" Tropics. (発表予定).
• [文献書誌] H. Noguchi et al.: "Canopy Structure and niche differentiation of a tropical montane forest community" Tropics. (発表予定).
• [文献書誌] M. N. Tamura et al.: "Floral Description in a Long-term Ecological Research Site in Doi Inthanon, Thailand" (発表予定).