研究概要 |
1.サラワク低地熱帯林のフタバガキ科についての調査研究 ランビル国立公園の52haプロット内のフタバガキ科の分布パターンの解析を行い,73種9亜種のフタバガキ科のうち,73%の種が地形依存性を示し,地形的なすみわけ関係の存在が多種共存に貢献している可能性に高いことが明らかとなった.また同様の解析を非フタバガキ科について行っても,同様の結果が得られた.航空写真と地上での調査を組み合わせて,ギャップの形成頻度と回復速度の推定の推定を行い,地滑りで形成されるギャップと,倒木で形成されるギャップとが発生頻度や撹乱後の回復過程を異にしており,更新ニッチの多様性の存在することを明らかにした.今後このような更新ニッチの多様性が,群集の多様性維持にどのように貢献しているのかを明らかにする予定である.フタバガキ科のDryobalanops属は52ha調査区内で地形的にすみわけている2種を有しているが,この2種について分子遺伝学的な調査を行い,種内の遺伝的分化が52ha調査区内でも進んでいることと,2種の遺伝的な距離が近く,種の分化とニッチの分化が最近生じたものである可能性の高いことが明らかとなった. 2.タイ山地林のブナ科についての調査研究 ブナ科については,タイのドイインタノン国立公園に15haの調査区を設置し,このうち7.5ha区画内での毎木調査と3ha区画内での同定作業を終了した.さらに更新ニッチ分割の解析のために,調査区内でのギャップの分布調査を3haの調査区内で終了した.予備的解析結果からはブナ科の内部に,地形依存的な分布や,ギャップ依存的な分布を示す種の存在することが確認された.今後ブナ科の内部でのニッチ分割の様子を定量的に解析する予定である。
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