研究分担者 |
村上 昌弘 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (70134517)
渡部 終五 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40111489)
谷内 透 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00012021)
WONGRAT Prachit Kasetsart University, Faculty of Fisheries, 講師
大竹 二雄 三重大学, 生産資源学部, 助教授 (20160525)
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研究概要 |
タイ、ラオスの河川から8種、インド、バングラデッシュの河川から4種の淡水エイを採集した。タイのチャオフラヤ川からHimantura signiferとH.chaophrayaの2種、ナン川からH.gerrardii,H.bleekeri,未同定種H.spの3種、バンバコング川からH.krempfiとPastinachus sephanの2種、ラオスのメコン川からDasyatis laosensisを確認した。インドのガンジス川からH.chaophraya,H.bleekeri,H.gerrardii,P.sephenの4種を確認した。これらの種と汽水、沿岸域から採集したアカエイ科のエイ類を用いてミトコンドリアDNA塩基配列分析を行い、系統類縁関係を調べたところ、Himantura属、Dasyatis属でそれぞれ1つのグループを作った。しかしながら、Pastinachus属の種と両属との系統的な関係を明らかにできなかった。タイ、インドの両地域から採集された同一種はそれぞれ同じグループにまとめられたが、遺伝学的にかなり離れた個体群であることが示唆された。 淡水域から採集されたこれらの種の浸透圧や塩類排出器官の直腸腺の構造から判断すると、これらの種は完全には淡水に馴化しておらず、汽水域との往来があることが示唆された。淡水エイの平衡砂のストロンチウム/カルシウム比を調べたところ、調査地域の汽水域、沿岸域から採集したエイのその比よりも明らかに低い価を示した。淡水エイと汽水産エイの筋肉、肝臓中の遊離アミノ酸を分析した結果、淡水エイでは明らかに尿素とタウリンが少なく、また、TMAOとベタインも低い値を示し、これらの物質が浸透圧調節に関与していることが示された。 これらの種のうち、H.signiferはチャオフラヤ川に比較的多く棲息しているが、他の種の生息数は多くないものと考えられた。H.signiferは雄で体盤幅210-230mm,年齢1-2歳、雌で250-260mm,2-3歳で成熟し、寿命は5年以上であることが判明した。他の種も成熟には2-6年かかることがわかった。しかしながら,本調査での最大種であるH.chaophrayaは成熟するまで7年以上かかり、体盤幅2m以上に成長することからより詳細な調査を必要とする。本課題の"適応と保護"のうち、保護に関する調査は糸口を見いだした段階にあり、今後の淡水域の環境悪化を想定した場合、さらなる継続調査を必要とする。
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