熱帯インド・太平洋の海底洞窟生物群の自然史科学的研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08041162
• 研究機関: 国立科学博物館
• 研究代表者: 加瀬 友喜 国立科学博物館, 地学研究部, 室長 (20124183)
• 研究分担者: RAULAY Gusta グアム大学, 臨海実験所, 教授 ; 奥野 淳児 千葉県立中央博物館, 研究員 ; 千葉 聡 静岡大学, 理学部, 助手 (10236812) ; 遠藤 一佳 東京大学大学院, 理学系研究科, 助手 (80251411) ; 田吹 亮一 琉球大学, 教育学部, 助教授 (60155231) ; 森 啓 東北大学, 理学部, 教授 (00004466) ; 速水 格 神奈川大学, 理学部, 教授 (80037184) ; 武田 正偸 国立科学博物館, 動物研究部, 室長 (20000143)
• キーワード: 古生物学 / 海洋生物学 / 生物地理 / 生きている化石 / 軟体動物 / 海底洞窟 / 進化

研究概要

1.本年度は南太平洋及びフィリピン、インドネシアの各地域の海底洞窟の調査、試料の採取をおこなった。現在、試料の整理およびそれぞれの分類群の仕分け作業を行っている。貝類および腕足類のDNA解析用の試料も、それぞれの地域の海底洞窟から採取することができ、今後分担者の千葉、遠藤および研究協力者の斎藤によって分析を進めている
2.上記の地域の調査の結果、南西諸島の海底洞窟内に見られたような特異な動物群が南太平洋地域にも広く分布することが確認できた。
3.二枚貝類についてみると、ニュウカレドニア、バヌアツ、フィジ-とトンガには、日本の南西諸島と共通する多くの二枚貝類が見られたが、タヒチでは二枚貝類で種構成の違いが確認された。当初の予測と異なり、親の体内で保育される二枚貝のかなりの数の種が、深海によって遠く隔てられた南太平洋の島々にも広く分布していることが明かになってきた。
4.また、これまでに多くの未知の貝類が採取されたほか、〓脚類、腔腸動物類などで、興味ある未知種が確認されつつあり、それらを専門とする国内外の研究者に研究の依頼を行っている。
5.現在採取した試料について研究を進めている段階であるが、本年度はおよそ当初の目的に沿った調査および試料の採取が達成できたといえる。これまでの調査結果を予察的にみると、当初の予想とは異なり、海底洞窟の貝類群は、熱帯西太平洋ではかなり種構成が均一であることがわかってきた。今後、分子レベルの比較を行うことで、海底洞窟の動物群の起源を探ることが出きると確信している。

研究成果

• [文献書誌] Kase,T.: "A nassariid gastropod from the submarine caues of Okinawa,Japan and Bohol,philippines : taxonomic status of N.eimanon." Venus. 55(3). 199-205 (1996)
• [文献書誌] Kase,T.: "A new species of the family Ungulinidae from Wakkanai,Hokkaido,Japan" Venus. 55(2). 97-103 (1996)
• [文献書誌] Kase,T.: "New species of Patellogastropoda (Mollusca) from the Cretaceous of Hokkaido,Japan and Sakhalin,Russia" Journal of Paleontology. 70(5). 762-771 (1996)
• [文献書誌] Hayami,T.: "Characteristics of submarine cave bivalves in the northwestern Pacific" American Malacological Bulletin. 12(1/2). 59-65 (1996)
• [文献書誌] 速水格: "二枚貝類の体サイズ変化と大量絶滅に関する一仮説(印刷中)" 化石. (62). (1996)
• [文献書誌] Chiba,S: "A new species of Mandarina (Palmcnatc,Camaenidae) from Anijima of the Bonin Island" Bulletin of National Science Museum,Ser.C. 22(3/4). 53-61 (1996)