研究課題
国際学術研究
高安動脈炎(大動脈炎症候群)は本邦では若い女性に好発する大型血管炎である。その病因は依然として不明であり、難病である本症に対しわが国では厚生省の難病研究班、文部省の研究班が組織され、全国的な統計、研究がなされてきた。また本症は他のアジア諸国、韓国、中国、タイ、インド、パキスタン、イスラエル、さらに南米諸国においても好発するが、文献により報告があってもまとまった研究報告はない。我々は本症の遺伝要因に注目し、HLAと本症発症との相関について検討したところ、HLA-B52ならびにB39との強い相関を認めた。HLA-B52陽性高安動脈炎患者は陰性例に比し炎症所見が強く、またHLA-B39陽性例では有意に腎動脈病変が多いことを今回明らかにした。またインド、中国の患者にも日本、韓国と共通したHLA抗原が本症と強く結びついていることを示した。またHLA遺伝子近傍にあるMICA遺伝子との相関を多型を用いて検討したところ、MICA1-2ならびに1-4との相関を認めた。次に本症の臨床症状を検討したところ、本邦では脈なしや大動脈弁閉鎖不全といった大動脈弓周囲の血管炎が多いのに対し、インドなどの南アジアでは腹部血管の障害が多く、高血圧などの症状を初発症状とすることが多いことがわかった。これらの理由は現時点では不明である。本研究経費のサポートにより開催された高安動脈炎国際会議において新たに高安動脈炎の血管炎分類を提唱し、これに沿った血管炎分類を実施しているところである。本研究の援助により、高安動脈炎の病因と病態、診断、治療に関し2回の国際会議をメキシコ市ならびに日本で開催することができ、proceedingとして成果を別途報告した。
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