研究課題
1、デング出血熱の発病機構に関する研究8名のデング出血熱と4名の不明熱患者からなる合計12名の患者の末梢血を採取し、各250μlからRNAを抽出した後、血清を分離し、ウイルス分離の目的で各10μlをC6/36細胞に接種し、残りを3分してマヒドン大学、医科学研究所、長崎大学熱帯医学研究所に保存した。ウイルス分離成績及びPCRによるデングウイルス遺伝子検出は共に陰性であった。IgM-ELISAによる血清診断でもすべての検体は陰性であった。サイトカイン及びそのmRNAの測定は平成9年度の資料を入手してから実施する予定である。2、デングウイルスの伝播に関する研究8軒の住居において5日間で合計671頭の蚊を採集した。その種組成は:ネッタイシマカ937頭(雌256頭、雄671頭)、その他78頭(Anopheles, Culexを含む)であった。雌を個体別に脚を分離し、マヒドン大学と久留米大学医学部に保存し、DNAを抽出後、種の鑑別を行う予定である。残りの雌個体別にRNAを抽出し、RT-PCRによってデングウイルス遺伝子を検出する予定である。3、総括本年度の調査研究はデングウイルス感染症の非流行期に実施したにもかかわらず、臨床的にデング出血熱と診断された患者からの採血、および居住区域において相当数の蚊を採集することができた。しかしながら現在までの成績では、ウイルス学的にデングウイルス感染症がこの時期に調査地域に存在する証拠は得られていない。この陰性結果の意義は、今後野外採集蚊の成績が得られてから慎重に検討する必要があるが、デングウイルス以外の病原体による出血熱、例えば腎症候性出血熱の可能性も考慮して検討する必要があるかも知れない。