研究概要 |
1.麻疹について インドネシアでは地域により、発生状況が異なり、2年に1回程度の流行波が同一地域でもみられるところが多い。パプアニューギニア(PNG)では流行波がくり返すうちに人口の増加と共にendemicとなった所があったが、1986年に大流行がみられ入院数が全土で7,500を記録した。インドネシアでは報告数が1989年には全土で24万、90年に激減し、以後、年間4-10万であった。PNGでは1990-94年の入院数が年間1,500であった。致死率は両国とも地域、その他の条件により大きく異なっている。 2.SSPEについて インドネシアでは情報が少ないが、日本に比べると多発している。PNGでは明らかに多発しているおり、特に1988年以後にそれがみられる。 3.麻疹予防接種について 麻疹予防接種導入はインドネシアでは1981-82年で、急速に接種率は向上し1991年以後は90%前後に達している。PNGでは1982年からで、接種率は現在なお35-65%の間を上下している。両国とも地域による差が大きい。 4.今後の調査研究(本調査)について 麻疹予防接種導入時より前のSSPE発生状況を知るには、インドネシアについては過去にさかのぼったSSPEの発生状況の把握、PNGについては過去にさかのぼった人口動態の把握が必要である。SSPE発生の地域差の解明には、(1)麻疹罹患者当たりのSSPE発生に焦点を当て、(2)中心的病院とスタッフが存在する比較的狭い地域を選んで、(3)長期にわたり調査を続けることによって、当該地域の特性を明らかにすることが効果的と思われる。さらに、現地野外麻疹ウイルスのゲノム特性、宿主としての住民の遺伝的特性(CD46、HLAなど)、環境特性(食生活など)の研究を計画している。 インドネシアでは、同国保健省、インドネシア大学医学部小児科、インドネシア小児科学会、タルマナガラ大学小児科、ガジャマダ大学小児科が調査協力と共同研究参加の意志を表明したが、調査研究費と、現地スタッフへの成果還元および技術移転が必要である。PNGでは、同国保健省に協力の意志があり、PNG大学医学研究所、PNG大学小児科、同国保健省中央公衆衛生ラボのスタッフを混えた共 同研究計画書を作成し、平成9年3月12日に同国保健省の医学研究に関する勧告委員会委員長に提出した。平成9年4月の委員会で承認される見込みである。
|