ダイオキシン類はいずれも強毒性であり、現在の環境レベルの汚染で人体にホルモン的影響を及ぼし、また、生殖障害や免疫抑制などの生体影響を及ぼす可能性があるために、近年、欧米諸国においては積極的に汚染軽減対策が進められている塩素系環境汚染物質である。昨年度、中原大学(台湾)化学系黄金旺教授との共同研究により台湾全土の主要な20河川の河口部を調査し、重度のダイオキシン類汚染が確認できた。本研究では、台湾におけるダイオキシン類の汚染調査を実施し、その汚染源の検討を行った。まず、台湾北部の河川の18カ所における底質中のダイオキシン類を分析した結果、台湾の最大商業都市である台北市およびその周辺地域の広範囲におよぶ重度の汚染が判明し、その汚染源は都市部全域に多数存在するものと判断した。一般に、ダイオキシン類は燃焼過程で非意図的に生成し、大気中に放出されることが知られている。従って、より詳細に汚染源を検討するため、台湾全土に生息する常緑広葉樹(ガジュマル)を指標試料として大気汚染を調査した。台湾全域14地点を検討した結果、郊外になる地域よりも人口密度の高い工業都市(Hsinchu市、Chiayi市およびKaohsiung市)および商業都市(Taipei市)に明らかなダイオキシン汚染が観察され、この傾向は我が国日本のものと同様であつた。しかしながら、日本におけるダイオキシン類は、大半が都市固形廃棄物の焼却に由来しているのが現状であるが、台湾においては廃棄物の焼却はほとんど行われておらず、ダイオキシンの発生源がそれ以外に存在するものと思われ、汚染源の究明が必要である。また、そのレベルは日本よりも比較的低度ではあったが、現在、多数の廃棄物焼却場の建設が計画されていることを考慮すれば、軽減対策の重要性が強調される。本研究の成果は今後のダイオキシン類環境汚染対策に極めて有意な基礎的知見となるものと判断される。
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