研究分担者 |
武田 直和 国立予防衛生研究所, ウイルス第二部, 室長 (90132894)
DELPEYROUX F パストゥール研究所, 腸内ウイルス分子疫学部, 研究員
CRAINIC Radu パストゥール研究所, 腸内ウイルス分子疫学部, 部長
吉田 弘 国立予防衛生研究所, ウイルス第二部, 研究員 (30270656)
清水 博之 国立予防衛生研究所, ウイルス第二部, 研究員 (90270644)
米山 徹夫 国立予防衛生研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (90100106)
萩原 昭夫 国立予防衛生研究所, ウイルス第二部, 室長 (10100091)
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研究概要 |
地球レベルのポリオ根絶計画が着々と進行し、わが国が属している西太平洋地域でも野生株によるポリオマヒ患者の数は激減している。1996年においては、わずか18例からポリオウイルスが分離された(カンボジア15,ベトナム2,ラオス1)。これらの分離株の遺伝子のVP-1領域をPCRで増幅し、制限酵素の切断パターンを見た。更にこの領域の塩基配列を決定して、株の由来を決めた。インドシナ地域ではこれまでいくつかの株が分離されていたが、1996年の分離株はいずれもI型で、しかもgroup Bに属するひとつの株であることがわかった。これらは主として、メコンのデルタ領域に限局して発症していた。ここ数年、もはやII型、III型のポリオウイルス野生株は検出されない。 中国でマヒをおこした患者からその性状を詳しく調べた。ポリオウイルスを分離したところ、VP-1領域はワクチン株でありながらウイルスのポリメラーゼをコードする領域は野生株であるリコンビナントであった。又、更に5´末端の非翻訳領域で525番目のヌクレオチドがUからCへと変換しているものもあった。中国では1995年以来、固有の野生株は消滅したと考えられ、1995年及び1996年にマヒ患者から検出された株は国境を越えたミャンマーからの輸入株と考えられている。野生株がワクチン株に置き換えられる過程でおこる変異や組換えについても詳しく調べる必要が指摘された。このような解析は未だ現在、野生株の残っているインドシナ地域の分離株ではなされていない。今後の課題は、ワクチン株と野生株の組換え体をできるだけ数多く調べ、その病原性を調べると共に、このような組換え体を効率よく検出するシステムを作り上げ、根絶計画におけるウイルスサーベイランスの質を向上させることである。
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