研究課題
中国に多発するリンパ球間質をともなう唾液腺未分化癌(以下、リンパ上皮腫)におけるエプスタイン・バ-ウィルス(EBV)感染に関して以下の各種検索をおこなった。平成6年度の上海、成都、昆明、広州、平成7年度の長春、西安、北京、武漢での調査に引き続き、平成8年度は、台北市、台中市、成都市、烏魯木斉市、済南市をそれぞれ訪問し、唾液腺リンパ上皮腫症例を抽出した。中国側からは、研究分担者の周、汪、李、楊がそれぞれ新潟大学を訪問して、検索結果を検討した。収集した症例のパラフィンブロックから連続切片を作製し、各種免疫染色をおこない、病理組織学的に検討した。また、EBVのコードするsmall RNA(EBER-1)の発現を検索するためにその相補的なRNAプローブをもちいてin-situハイブリダイゼーション(ISH)をおこない、切片より抽出したDNAで、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によってEBVのBamHI W領域の増幅される断片を検出した。唾液腺リンパ上皮腫症例の累計は、平成6年度よりの調査以来、合計159例となった。広州、上海、成都に多発し、その発生に地域的要因があることが示された。男女比は1:1、平均年齢は43歳、最年少は9歳、39歳以下が35%をしめた。部位では、耳下腺が70%、顎下腺11%、小唾液腺14%で、とくに口蓋10%が注目された。病理組織学的には、大砲巣型と小砲巣型に大別され、免疫組織学的には、癌細胞の唾液腺導管様性格が、浸潤リンパ球のT細胞性格が確認された。ISHによって検索したリンパ上皮腫症例のほぼ全例で、癌細胞のEBER-1陽性、PCR法によるEBVのDNA断片が増幅が確認された。対照病変ではEBV陽性シグナルはえられず、唾液腺ではリンパ上皮腫におけるEBV感染はきわめて特異的で、この癌腫の発生に重要な関与をしていることが示唆された。
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