研究概要 |
本研究は若年者の肝細胞癌が多いミヤンマー国において,肝細胞癌の発生と鉄過剰症の関係,さらに,B,C型肝炎の広がりについても明らかにすることを目的として企図された.1996年12月24日より1997年1月7日までの期間と1997年12月17日〜27日の期間で,ミヤンマー国立医学研究所の生化学部門,病理部門,および国立ヤンゴン総合病院血液疾患部門,肝臓疾患部門,国立ヤンゴン小児病院血液部門にて調査研究を行なった.対象患者は肝臓疾患部門の患者104名内肝細胞癌28名,血液疾患部門のサラセミア患者22名,小児病院血液部門のサラセミア患者16名,患者とは別個に20例の肝癌手術例の病理組織標本の提供をうけた.結果として, 1)肝疾患患者の大部分はB型肝炎ウイルス感染の既往を有しているが,持統B型肝炎ウイルス感染を意味するHBs抗体陽性者は検索者102名中36名(35%)であり,持続C型肝炎ウイルス感染を意味するHCV-RNA陽性者は全抗C型肝炎抗体陽性者40名の79%に相当する32名(31%)と推定される.肝癌患者28名に絞ってみると,B型肝炎ウイルスのみが関与していると思われる者13名(46%),B型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの両者が関与していると思われる者2名(7%),C型肝炎ウイルスのみが関係していると思われる者6名(21.4%)であった. 2)患者血清の鉄過剰状態の検索:検索した患者グループ全てに鉄代謝には強い異常が見られた.肝疾患者の約2/3はTIBCの低下を示していた.サラセミア患者には鉄飽和度の上昇と血清フェリチン,自由の強い上昇が見られた. 3)異常ヘモグロビン,手術材料より鉄関連蛋白,癌関連遺伝子異常を検索した. 鉄過剰は調査疾患に非常に多いことが判明した.輸血以外の鉄過剰の原因を調べるとともに,疾患の進展に及ぼす影響を評価する必要がある.この調査研究により,これらの地域ではC肝炎が非常に多いことが始めて見いだされた.サブタイプは1b型であり,治療抵抗性であると考えられる.早急に蔓延防止の対策を講じることが必要である.
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