研究課題
国際学術研究
中国海門市における肝がん発生に関する宿主要因(がん遺伝子・がん抑制遺伝子など)と環境要因(HBV/HCV感染、AFB_1汚染食品摂取、当該地域のクリーク水・溜池水などの飲用、喫煙・飲酒歴など)の関与及びそれら諸要因の交互作用について諸観点から調べ、肝がん発生予防に資する。【研究対象・材料と方法】1)クリーク水・溜池水などからMCsの検出を行った。2)食品(とうもろこし、ピ-ナッツなど)を採取して、AFB_1及びその他のマイコトキシンの分析を行った。3)パラフィンブロック標本を利用した肝がん病理学的研究、MCsの検索及びがん遺伝子・がん抑制遺伝子分析を行った。4)肝がん症例群と性・年齢を1:1でマッチさせ、地域住民から無作為抽出した対照群に対して、既往歴・家族歴、AFB_1汚染食品摂取状況、飲料水の種類と飲料状況、喫煙・飲酒歴などに関する面接調査を行い、データの集計には単変量ないし多変量解析を行った。さらに、肝がん症例群と対照群より血液を採取し、血漿・血清部分を利用してHBV/HCVのマーカー及びサブタイプ、AFB_1アルブミンアダクト、セレニウムなどの微量元素、抗酸化物質、脂肪酸組成、TNF_α活性、神経分化誘導因子などの分析を行った。【結果と考察】これまでに飲料水及び環境中のMCsの定性・定量法を開発し、当該地域のクリーク水・溜池水などからMCsを検出した。食品の化学分析では、とうもろこし、ピ-ナッツなどにAFB_1及びその他のマイコトキシン(フモニシンなど)を検出した。当該地域の肝がんパラフィンブロック標本を利用した研究により、AFB_1関連肝がんに特異的なp53変異を見い出した。症例対照研究(184ペア)では、対照群と比較して症例群に肝疾患既往歴や家族歴があるものが多かったが、AFB_1汚染食品摂取状況については両群間に差異を認めなかった。クリーク水・溜池水などの摂取頻度・摂取期間にも両群間に差異を検出できなかった。症例群に喫煙歴及び飲酒歴が多かったが、その差異は統計学的に有意ではなかった。AFB_1アルブミンアダクトの陽性率は、対照群と比較して症例群に高かったが、統計学的に有意ではなかった。HBV/HCVの血清マーカー及びサブタイプを調べたところ、当該地域にはHCV関連肝がんもあるが、HBV関連のものがメインであった。
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