研究概要 |
肝細胞癌の前癌病変として肝硬変にみられる過形成結節が注目を集めているが、病因の異なると推察される本邦と欧米の肝細胞癌の前癌病変の実態を明らかにするため、本邦と北米の肝硬変における過形成結節の比較検討、ならびに病因としての肝炎ウイルス関与の比較検討を目的としている。 1。過形成結節の分類、国際比較、ならびに用語の国際的統一 本邦においては「原発性肝癌取扱い規約」により、肝硬変に見られる過形成結節性病変を、大型再生結節、腺腫様過形成、異型腺腫様過形成、癌を内包する腺腫様過形成の4種に分けている。このうち、腺腫過形成ならびに異型腺腫様過形成は前癌病変としての可能性が高く、癌を内包する腺腫様過形成は、前2者が癌化したものと解釈している。一方、欧米では大型再生結節と腺腫様過形成をdysplastic noduleと総称し、前者を悪性化の可能性が低い病変とみなしてlow grade,後者は種々の肝細胞の過形成像をみることから悪性化の可能性をもつものとしてhigh gradeに分けている。根本的な解釈はほぼ一致しているが、それぞれの過形成病変についての解釈には少なからざる食い違いがある。そのため、現段階では本邦の4種類の過形成結節、カナダのdysplastic nodule,low gradeおよびhigh grade病変、各々数例について共同研究者Dr.Wanlessと本邦研究者の見解の比較を行っている段階である。 2。過形成結節の頻度について 現在まで北米の肝癌合併肝硬変30例と本邦の100例について検討を行っているが、前者では4例(13.3%)、本邦症例では19例(19%)に腺腫様過形成の併存を認めており、それらの病変についての両国間における見解の統一をはかっている。
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