研究概要 |
本研究の目的 本研究は、インド諸宗教の根本課題である霊魂の浄化・解脱という観念に関し、ヒンドゥー教(高島担当)、ジャイナ教(カヤ担当)、仏教(中谷担当)という主要3宗教における歴史的発展と相互影響を跡付けつつ、これを明らかにし、その今日的意味を究明することを目的とする。 平成8年度実績 平成8年度は,日本側2名が9月1日〜30日の1ヶ月間渡仏し,フランス側との研究打ち合わせを行った。 最近のインド古典文献データベースの整備により,コンピュータ利用はインド文献学にとって必須条件となりつつあるが,この点に関し,フランス・インド学はまったくといってよいほど立ち遅れていることが判明した。 現時点において我々日本側の所有するインド語文献電子テキスト200メガバイト,漢訳仏典50メガバイト,チベット語仏典300メガバイトは,それを利用するユ-ティリティープログラムとともに,フランス側には大変な驚きをもって迎えられ,これに関する情報伝達を強く求められた。 その結果,研究分担者CAILLAT教授だけでなく,コレージュ・ド・フランスのGerard FUSSMAN教授,パリ第3大学Nalini BALBIR教授,M.C.PORCHER教授,パリ国立高等研究院В.DAGENS教授,国立科学研究院K.BHATTACHARYA主任研究員らからの要請があり,コレージュ・ド・フランス(9月23日),パリ第3大学(9月28日)において,中谷,高島が講演をした。またそれぞれ数日をさいて,説明しつつ,データベースとプログラムのインストレーションを行った。 このため,当初予定した研究打ち合わせの日程が多少窮屈になったが,予定通り行うことができた。「霊魂の浄化」には,一つは,「心が現在および将来乱されることを避けること」(samvara),一つは,「現在ある心の乱れを正すこと」(nirjara)という2種の「浄化法」がある。この2種の範疇によって,「解脱にいたる」という文脈をヒンドゥー教,仏教,ジャイナ教のすべてにわたって収集し,比較を試みることで合意した。この基本方針に添って,現在研究を遂行中である。 なお,コレージュ・ド・フランスからは,上記講演と情報伝達に関し,神戸学院大学宛感謝状を受領した。
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