研究概要 |
ブラーフマナ末期(紀元前7〜8世紀)から徐々に姿をあらわした業(karman)の思想は,善,悪の行為の結果が,時間的に長短の差はあっても後に必然的に行為者に及ぶという理論へと発展する。換言すれば行為の結果は,甘受することによって解消されない限り,いつか必ず発現する潜勢力として行為者に付着しているのである。ここにおいて精神の完全な自由(解脱)の獲得は,(1)このような結果を引き起こす行為をなさないこと,(2)既になした行為の潜勢力を一挙に(輪廻の中で幾度も生死を繰り返すことなく)解消することと捉えられることとなる。 さらにこのような「行為-結果」の必然的因果関係の超越は,「霊魂の浄化」によってのみ可能とされる。 仏教,ジャイナ教,ヒンドゥー教において霊魂に付着する不浄物はそれぞれtrsna(渇望),karman(業),mala(汚物)と表現される。本共同研究は,古代インドの3大宗教においてこれらの概念が共通の源泉から発達し,変遷を見たものであることを跡づけた。
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