文化財の微量試料分析法の開発

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08044017
• 研究機関: 東京国立文化財研究所
• 研究代表者: 三浦 定俊 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 部長 (50099925)
• 研究分担者: バーメスター A. デルナー研究所, 科学部, 部長 ; ゼゲバード C. 国立金属材料研究所, 研究室, 室長 ; キューレンタール M. バイエルン州立文化財保存研究所, 修復部, 部長 ; 日高 薫 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助手 (80230944) ; 坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助手 (60270401) ; 斎藤 務 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助手 (50205663) ; 沢田 正昭 奈良国立文化財研究所, 埋文センター研究指導部, 部長 (20000490) ; 加藤 寛 東京国立博物館, 資料部・研究指導室, 室長 (70161114) ; 川野邊 渉 東京国立文化財研究所, 修復技術部, 主任研究官 (00169749) ; 佐野 千絵 東京国立文化財研究所, 保存科学部, 主任研究官 (40215885) ; 渡邊 明義 東京国立文化財研究所, 所長 (00249913)
• キーワード: 金属 / 貨幣 / 漆 / ラッカー / 保存 / 修復 / 材料分析

研究概要

文化財に関する近年の研究では、保存や修復のためだけでなく歴史的研究のためにも、材質や製作技法などに関する自然科学的研究が必須となっていて、様々な分野の研究者が総合的に文化財に取り組むことが必要となっている。本研究においては、対象とする文化財の歴史的・文化的研究とその課題をふまえ、微量試料分析に対して期待することの大きい文化財の分野として、金属文化財と漆を含む天然樹脂を用いた彩色文化財を選んだ。金属文化財については日本では貨幣の微量試料分析を中心に研究を行うこととし、この研究について実績のあるドイツの研究所や分析センターなどを訪問調査して研究協議を行った。漆を含む天然樹脂を用いた彩色文化財については、試料の採取方法、前処理の方法、分析法法、修復への応用などについて、ミュンヘンのバイエルン州立文化財研究所で、2日間にわたる日独双方の研究者による研究セミナーを開催した。またこれに併せて、ベルリン、ミュンヘン周辺の地域など文化財のある現地を訪問して研究協議を行った。現地での協議では、分析結果が実際の文化財の修復にどのように応用されているかという点について多くの論議が集中したが、後世の修復により何層にも彩色層が重なった文化財について、それぞれの彩色層の成分や材料を明らかにし時代を明確にさせることによって、美術史研究者や歴史研究者との実りある討論ができるということで双方の意見が一致した。また輸出漆器についての緊急な問題として、漆がドイツに産出しないために後世の修理では密蝋など漆以外の樹脂を使用して修理を行っていて、現在新たな修理を行うためには、表面に後世塗られた樹脂の材質が何であるかを明らかにし、その除去方法を修復者に示すことが保存科学者にとって重要な課題となっている。この他、ドイツ側研究者が来日して漆の諸材料を収集し、分析や技法研究のための試料とした。

研究成果

• [文献書誌] Noriyasu Niimura,Tetsuo Miyakoshi,Jun Ogata and Tetsuo Higuchi: "Characterlzation of Rhus vernicifera and Rhus succedanea Iacquer films and their pyrolysis mechanism studied using two-stage pyrolysis-gas chromatography/mass" Journal of Analytical and Applied Pyrolysis. Vol.37. 199-209 (1996)
• [文献書誌] Noriyasu Niimura,Tetsuo Miyakoshi,Jun Ogata and Tetsuo Higuchi: "StructuralStudies of Melanorrhoea usitate Lacquer Films Using Two-stage Pyrolysis-Gas Chromatography-Mass Spectrometry" Rapid Communications in Mass Spectrometry. Vol.10. 1719-1724 (1996)