研究課題
文化財に関する近年の研究では、保存や修復のためだけでなく歴史的研究のためにも、材質や製作技法などに関する自然科学的研究が必須となっていて、様々な分野の研究者が総合的に文化財に取り組むことが必要となっている。今年度は漆を含む天然樹脂を用いた彩色文化財について研究を行った。7月に日本側研究者が訪独し、ミュンヘンのバイエルン州立文化財研究所で、2日間にわたる日独双方の研究者による研究セミナーを開催した。セミナーでは日本側から日高が輸出漆器について、宮腰が漆のGC/MSによる分析について、北村が漆のクリーニングについて、加藤が青い漆についてそれぞれ研究発表し、ドイツ側からはダグリー兄弟、クリヤード一家、マルティン・シュネルなど17-18世紀の家具職人について数人の研究者から研究報告があり、また英国のオリバー・インピー氏から16-17世紀の日本とヨーロッパの貿易について講演があった。このほか、ハンブルグ、ミュンツアー、シュツットガルト、ミュンヘンの博物館・美術館において収蔵品を調査し、資料の収集を行った。ミュンツアーの漆芸美術館、シュツットガルトの民族博物館の漆芸品のコレクションは比較的良く知られたものであるが、それ以外にも数多くの輸出漆器がこれらの館には収蔵されていることが明らかになった。しかし当初の形態がそのまま残されている品物は少なく、その多くが解体されて西洋家具の一部に利用されているなどかなり後世の手が入っているため、可能な場合は後日試料を採取して分析することとした。この他、ドイツ側研究者が来日して四国を中心に漆芸技法について調査を行った。
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