研究課題/領域番号 |
08044018
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研究機関 | 奈良国立文化財研究所 |
研究代表者 |
田中 琢 奈良国立文化財研究所, 所長 (40099958)
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研究分担者 |
周 天游 中国, 陜西省歴史博物館, 館長
沢田 正昭 埋蔵文化財センター, 研究指導部, 部長 (20000490)
田中 淡 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (90000306)
町田 章 文化庁, 文化財保護部, 監査官 (90000471)
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キーワード | 高松塚古墳 / 法隆寺 / 顔料 / 漆喰 / 転写 / 暴露試験 / 接着剤 / 色見本 |
研究概要 |
(1) 古代璧画の顔料を璧画面に接着するための素材に関しては、カゼイン(燐蛋白質の一種)・魚油・樹脂などが取りざたされてきた。膠やフノリも比較的古くから利用されてきた素材のひとつである。この種接着剤の分析同定のために、分光光度計による紫外波長領域(180nm〜)から近赤外波長領域(〜2400nm)までの連読した吸収スペクトルを取り込み、比較検討した。唐代の璧画資料からは、中国で70年来使用されている桃樹脂に似た吸収スペクトルが得られ、古代にも使われていた可能性を示唆した。また、数日放置するだけで変質する膠について、この現象を分光分析でも明確に確認できた。総体的に、古代壁画に使用された各種の物質や壁画の剥落止めに使用する保存材料の同定に見通しを得たといえる。 (2) 唐代璧画や古代寺院にみられる璧画は、本体が土であり、土壁である。土の持つ吸放湿性が作用することによって、外気の激しい温度・湿度などの環境変化を緩和し、璧画面を保護している。古墳内部から転写した璧画の背面を強化する素材は、強度的な面だけでなく、土の持つ吸放湿性を付与する素材の採択がきわめて重要といえる。本研究では、特殊な変性エポキシ樹脂を開発し応用することによってこれを解決した。 (3) 昨年度に引き読いて、古代に使用された顔料の色見本カードを作成し、その耐候試験をおこなっている。今年度は、特に2種類以上の顔料を混ぜた、いわゆる混色の色見本を作成し、その耐候試験を継続的に実施した。その際、臙脂・藍・藤黄などの有機質顔料に、鉛丹・朱などの無機顔料を混合した色見本について重点的に耐候試験をおこなった
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