研究分担者 |
HEJBOWICZ St ビリュニュース高等農業専門学校, 教授
MAJEWSKI Sta ビリュニュース, ポーランド大学・経済法律学部, 准教授
ZILINSKIENE ライムーテ 国立ビリュニュース大学, 社会学科, 助教授
早坂 真理 東京工業大学, 社会理工学研究科, 教授 (80164929)
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研究概要 |
この国際学術研究は,日本人研究者2名とリトアニア人研究者3名が協力して,リトアニア国・ヴィリュニュース県・パギェライ村を中心に,複数民族が共存する地域を総合的に調査し,複数民族が社会的にどのように協調して共存しているかを,農家の直接面接を行いつつ,解明することを目的としている。平成8年に7月にポーランド人部落の11戸を調査し,12月にタタール人(イスラム教徒)部落を9戸調査し,平成9年2月にロシア人のロシア正教徒旧教徒派を8戸調査し,9月にリトアニア人部落とベラル-シ人部落を合計10戸調査し,12月にロシア正教徒正統派の農家9戸を調査し,平成10年1月にベラル-シ人部落を4戸調査し,2月にとドイツ人農家とカライム教徒農家を合計5戸調査した。合計56戸の総合的な調査であった。1戸あたりの平均調査時間は5時間であった。それ以外に村長・部落長・役場の農事課・小学校などの機関調査も行い,それらの会話を2時間の録音テープで合計120本に録音した。調査のポイントは婚姻関係と財産分与と職業履歴と使用言語に置かれた。また56戸のすべてにおいて詳細な家系図を作成しミクロ的な分折を行った。 結論を述べれば,この地域における複数民族は平和的に共存しており,その平和的共存の基本的要因は,弱小民族に対する手厚い保護政策と,民族間をまたがる婚姻関係の成立にあることが観察された。とりわけ保護政策は,小学校教育と言語政策において充実しており,また雇用政策においても弱小民族に対する差別は観察されなかった。民族ゆえの所得格差は観察されず,社会主義から市場経済化への移行に対応しうる能力の有無によって生活水準が決定されていた。しかし同時に市場経済の中で,高学歴をめざず少数民族においては孫が多数民族であるリトアニア語の小学校に通学するという事例が多数観察され,民族のアイデンティティをどのように椎持するかという困難な課題の発生が予想される。
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