研究課題
長期失業、若年失業、貧困の拡大という問題が日本でも深刻化している。ドイツにおいてその対応策として80年代以降注目されてきたのが、就労扶助(Hilfe zur Arbeit)である。96年社会扶助法(BSHG)改正を受けて、社会扶助の実施主体である郡および市は就労扶助の実践において、新たな対応を迫られることになった。すなわち、一方で就労扶助の拡大が義務化されたと同時に、それを忌避した者への制裁も実施しなければならなくなった。自治体ごとの対応は多様であり、各自治体の運用状況を現場レベルまでおりて精査しなければ、就労扶助の評価はできなくなっている。我々は、98年9月から10月にかけてドイツ側パートナーの協力を得て、ドイツ6都市(フレンスブルグ市、(2)ブレーメン市、(3)ヴァレンドルフ市、(4)ライプチッヒ市、(5)ビーレフェルド市、(6)ブラウンシュバイク市)で調査を行った。それによって、自治体ごとの社会扶助受給者の動向と、それを背景にして就労扶助が多様な展開を示している現状を明らかにできた。さらに6都市の就労扶助の展開をパターン化し、その特徴と基本的傾向とを明らかにできた。また、ライプチッヒ市を除く5都市の福祉担当部署で行った具体的ケースの処遇に関する聞き取り調査を通じ、日独間の福祉行政機構および専門職の配置の違いを明らかにした。また、行政担当官の現場での裁量範囲の違いも明らかにした。さらに、ドイツにおいても福祉機構改革が進みつつあり、今後のあるべき方向性について日独間で共同研究を進めていくことが重要になっていることも確認できた。
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