研究課題
平成8年7月の第1回中国側訪日調査、および、同年11月の第1回日本側訪中調査では、郷鎮企業の環境問題に関する研究論文を双方の研究者が報告することで、郷鎮企業の環境問題に関して、日中の研究者の間に、共同で調査・研究を進めるための基本的な合意が形成されるように努めた。さらに、中国における郷鎮企業に対する環境政策、およびその実施状況については、国家環境保護局における聞き取り調査、天津市および河北省で現地調査を実施した。現地調査および論文の交換を通し、郷鎮企業(特に郷鎮工業)発展の経緯の中に、すでに環境問題が生じるメカニズムが存在していることが明らかとなった。また、調査にあたり、郷鎮企業の業態が、予想以上に複雑であり、調査結果を相互に比較する形でまとめることが困難であることが判明した。この経緯を踏まえ、現在、1997年度に予定しているアンケート調査にむけて、調査項目の選定、調査単位の選択などの再検討を開始している。新たな知見としては、1996年8月に公表された中国国務院の『環境保護に関する若干の問題に対する決定』により、中国における環境政策の基本方針が示され、郷鎮企業の環境対策は、規模が小さく環境対策の改善が進む見通しの低い、18類15小の郷鎮工業の操業停止を含む政府主導型の政策が進められていることなどが得られた。実際すでに、この郷鎮工業の環境対策の実施に当たり、18の関連部局(国務院、国家環境保護局など)が、『検査庁』を組織し、地方レベル(県)での政策の徹底を実施している。このことから、郷鎮企業の環境政策が、中国の環境改善に向けてどのような効果を持つのかなどに関して、現地調査を通し、早急に研究を進める必要があることが判明した。