研究課題
国際学術研究
1998年8月、16世紀末から17世紀初めにかけてカトリックへの改宗ユダヤ人「マラーノ」が大勢ポルトガルから移住してきたアムステルダムを中心に、フィールドワークを行った。とくにその南方10キロの寒村アウデルケルクのユダヤ人墓地での調査は、二重の信仰に引き裂かれたマラーノの意識構造を知るうえですこぶる意義のあるものとなった。さらに同年8月下旬、北ポルトガルの山間の村ベルモンテを中心に、最後のマラーノの実態調査を行った。その際、ポルトガル・マラーノの研究者マリア・ガルシア女史とも直接会って、とくに20世紀におけるポルトガル・マラーノの歴史に関する知識を飛躍的に広げることができた。このような北ポルトガルにおける現地研究者との交流と資料収集は、異教徒に不寛容なカトリック王国ポルトガルの数百年におよぶ宗教政策を知るうえできわめて重要な意味を持っていた。さらに1998年12月、インド南部ケララ州のコーチンと、大都市ボンベイおよびカルカッタにおいて、インド・ユダヤ人の歴史についての調査を行った。これらの調査は、ポルトガルからインドを経て日本に渡ってきたイエズス会士とマラーノ系冒険商人の活動の軌跡を日欧文化史の立場から追究するために、また「白いユダヤ人」と「黒いユダヤ人」に大別されるインド・ユダヤ人の帰属意識とその特異な歴史を解明するために、どうしても必要なものだった。今年度は最後に大分で、イエズス会士が日本においてその布教活動を遂行するため、当地の金鉱発掘に関わっていた歴史を検証した。以上、科学研究費補助金による3年間の調査によって、ポルトガル本国におけるマラーノの歴史に関して、またユダヤ人が大勢移住して行ったオランダ、インド、ブラジルおよび日本におけるポルトガルの宗教活動に関して、数々の新しい知見を得ることができた。
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