研究課題
(1)消費者法の国際的ハ-モナイゼーションについて本プロジェクトの当初の研究課題は、国際連合消費者保護ガイドライン(1985年採択)の研究を軸として、各国における消費者法が同ガイドラインに沿ってどのように立案され実施されているかを明らかにし、その状況を消費者法の国際的平準化として捉えうることを検証することにあった。この課題について、われわれの研究が明らかにしたところを次に概説する。国際連合は、1985年のガイドライン採択後、とりわけ発展途上国の各国政府がガイドラインに沿って、消費者保護に関する政策を推進するように、世界の諸地域でセミナーを開催しているが、Consumers International(国際消費者機構、旧IOCU)専門的地試の提供とセミナーの呼びかけにつき常に中心的な役割を担っている。そうした活動の影響を受け多数の国で消費者法が制定されたが、日本の消費者保護基本法のようなプログラム規定ではなく、具体的な権利の確定とその行使の確保をはかることを内容としている。しかし、国際連合はこれをもって満足しているわけではない。企業活動のグローバル化に対応した消費者政策の検討、環境問題と消費生活の在り方の検討、食料品の安全性確保のため国際諸機関との提携強化などの課題と今後、ガイドラインに盛りこむこともありえないわけではない。ガイドラインの改訂動向を追及することは今後の課題として残されている。(2)地域ごとの調査研究について本プロジェクトとしてはEU、北米およびオセアニア地域を調査地域として研究を実施したが、1990年代の消費者法制に特徴的な現象は、金融サービス取引をめぐる被害消費者の救済問題がどの地域においても社会問題化していることである。ヨーロッパにおいては、北欧に端を発するオンブズマン制度が法的根拠や形態を異にしながらも各国において採り入れられつつあり、イギリスの自主規制的オンブズマン制度は、オーストラリアおよびニュージランドにも定着して成果をあげていることを知りえた。本プロジェクトの研究成果として公表予定の論文でもこの点がとりあげられている。(3)その他'97年3月には追加研究としてアジア研究の一環として隣国韓国での消費者法につき調査研究を実施し、特に同国の消費者保護院の役割、金融取引の規制について知見を得た。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)