研究課題/領域番号 |
08044040
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究分野 |
経済政策(含経済事情)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
柴田 弘文 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80112001)
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研究分担者 |
阿部 顕三 大阪大学, 経済学部, 教授 (00175902)
井堀 利宏 東京大学, 経済学部, 教授 (40145652)
八田 達夫 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (70008647)
PANAGARIYA Arvind メリーランド大学, 経済学部, 教授
植田 和弘 京都大学, 経済学部, 教授 (20144397)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1998
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キーワード | 自由貿易 / 環境保全 / 排出権取り引き / 世界共通汚染税 / 防衛費 / ナッシュ均衡 / 外部性 / ロードプライシング |
研究概要 |
戦後まもなくGATT(関税と貿易に関する一般協定)が制定され、1995年のWTO(国際貿易機関)の設立に至るまで、一貫して貿易の自由化が推し進められて来た。自由化により、生産がより効率的な地域で行われるようになり、貿易参加国の厚生が増大すると言う考えに基づいている。しかし、環境問題の高まりと共に、果たして一律的貿易自由化が望ましいかが疑問視されている。一般に発展途上国の天然資源には、所有権が確定していないことが多く、利用に対価が支払われることなく、例えば熱帯雨林の木材のように伐採費用と輸送費用のみがコストに計上されて、社会的コスト以下の価格で輸出されることが多い。その結果、発展途上国の環境破壊が進んでいる。このような事態への対応として、輸出国による輸出制限、或いは輸入国による輸入制限等、自由貿易への介入を正当化する議論が強くなっている。 当研究は、それらの議論の理論的妥当性を検証すると共に、具体的環境保護政策の得失を検討した。問題の複雑性から、環境と貿易政策について明白な結論は得難いが、自由貿易と環境保護は、必ずしも対立するものでない事が認められた。自由貿易が環境に悪影響をもたらすのは、貿易そのものでなく、自然環境の利用に正当な対価が支払われていないことにある。もし対価を支払う制度が国内に導入されるならば、自由貿易が環境悪化をもたらすことはない。問題は多くの国で自然環境に対価を付加する有効な手段がなく、輸出入の水際での対価徴収が最も有効な手段となっている点である。しかし、この方法は国内価格と国際価格の乖離から不効率をもたらす。 従って、国内外の価格差を生まない、対応が望まれる。一例は、世界的一律税率の環境税の導入である。しかし、一律環境税が、一部の学者が主張するように、常に世界的汚染抑制を最小コストで実現するコストエフェクティブな解決策でないことも明らかにされた。多くの環境汚染では、汚染物排出者自身も汚染の被害者であるから、自ら排出をコントロールする。従って政策は、現状のナッシュ均衡をよりパレート優位にするナッシュ均衡にシフトさせるタイプのものでなければならないからである。
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