研究分担者 |
LAMPRECHT G. オレンジ州立自由大学, 化学科, 教授
SYKES A.G. ニューカッスル大学, 化学科, 教授
馬越 啓介 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20213481)
市村 彰男 大阪市立大学, 理学部, 教授 (50047396)
永澤 明 埼玉大学, 理学部, 教授 (40108452)
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研究概要 |
本研究の目的は,レニウム錯体について,酸化状態の違いと配位子置換反応性の関連および金属間の相互作用と酸化還元反応性の関連を明かにすることである。レニウムは周期表の中でも最も多くの酸化状態をとる元素であり,これらの反応性を調べるのに適している。平成8年度の成果に基づき,本年度はレニウム錯体の反応性の基礎的な事柄に関していくつかの具体的な成果が得られ,当初の目的を達成できた。 南アフリカのLamprecht教授の研究室よりBotha博士が3ケ月間研究代表者の研究室に滞在し,N,N,N,0型の4座キレート配位子およびN,N,O型の3座キレート配位子を用いて,Re中心へのキレート環形成過程を,中間過程の化学種を単離,構造決定することにより明かにした。これにより高酸化数に伴うオキソ基の配位が多座配位子のキレート環形成過程に及ぼす効果を視覚的に明かに出来た。これは,置換活性な金属イオンでは不可能な成果であり,レニウム錯体以外にも広く適用できる重要な知見である。 さらに,イギリスのSykes教授との間には,いくつかの成果が得られているが,特にレニウム(III)六核錯体の特異な反応性が明かとなった。硫黄架橋レニウム(III)六核骨格,Re_6S_8は最近機能性物質や,生体内鉄硫黄クラスター骨格の基礎的な構造モデルとして,注目されつつあるものであるが,その基礎的な反応性はほとんど調べられていなかった。主にRe-Re間に多重結合をもつ複核錯体を新たに合成し、その構造や酸化還元反応性を明かにした。本研究では,この化合物を,レニウム金属間結合を持つ典型的な化合物と捉え,配位子置換反応性と酸化還元反応性を調べた。その結果,異常に置換不活性であることと,これまでの見解に反し,酸化還元活性であることとが明かとなった。Re_2の酸化数が,(III,IV)および(IV,IV)の二つの状態の錯体の構造解析により,両者のRe-Re距離の比較から,金属間結合に関わる結合軌道の性質を初めて明かにした。
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