研究分担者 |
FROERHIC Jef 米国国立衛生研究所, 老年学研究センターメリーランド大学, 部長教授
ALBERS Wayne 米国国立衛生研究所, 神経科学研究所, 酵素化学部部長
MARDH Sven リンシュビング大学, 生命科学部, 教授
今川 敏明 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (20142177)
嘉屋 俊二 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90186023)
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研究概要 |
従来までの研究により、H,K‐ATPaseのα鎖のTyr10とTyr7が順に,またSer27がH,K‐ATPase標品(GI画分)に内在するチロシンおよびセリンキナ一セによってそれぞれリン酸化されることを見いだした。本研究ではα鎖をリン酸化する両キナーゼの性質をα鎖、およびα鎖のリン酸化部位をマルトース結合タンパク質(MBP)と融合させたリン酸化モデル基質(MP,P-HK)を用いて検討し、さらに免疫反応から、その同定を試みた。 GI画分にCaを添加して内在性キナーゼによるリン酸化反応を行ったところ,Ca濃度に依存(K1/2=0.9μM)してα鎖のセリンリン酸化量が増加したが,チロシンリン酸化はCa濃度に依存しなかった。界面活性剤CHAPS存在下では、α鎖のセリンリン酸化量は減少し,Ca濃度依存性も消失したが,プロテインキナーゼC(PKC)活性化剤TPAを添加すると,Ca濃度に依存(K1/2=1.0μM)したリン酸化が観察された。CHAPS処理前後のα鎖,およびMBP‐HKのセリンリン酸化は,PKC特異的阻害剤で阻害た。さらに、PKC抗体を用いたウェスタンプロッティングの結果より、Gl画分中にPKCαとPKCβIIが存在することが示され,両PKCともMBP-HKをリン酸化することが明らかになった。 一方、チロシンホスファターゼ阻害剤であるバナジン酸存在下で観察されるα鎖のチロシンリン酸化は、pp60src阻害剤ゲニステインで阻害された。抗c‐Src抗体を用いたウェスタンプロッティングの結果より、GI画分において分子量5万と6万のc‐Src様プロテインキナーゼの存在を碓認した。免疫沈降により得られた、免疫複合体を酵素源とするとMBP‐HKのチロシンリン酸化が観察された。CHAPSで可溶化したGI画分からこの2種のチロシンキナーゼをゲル濾過カラム(Superosel2)で分離し、MBP-HKへのチロシンリン酸化能を検討したところ、分子量6万のキナーゼのみがα鎖N末端の配列をチロシンリン酸化することを見い出した。 本研究によって、GI画分に内在する模型のPKCαとβIIがcaに依存して、また膜型のc‐Src様チロシンキナーゼがそれぞれα鎖をリン酸化することが示唆された。
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