研究概要 |
本プロジェクトにおいて,我々は日本,米国およびインドにおいて,様々な研究活動を行なった。時間順に述べると,まず9月に倉本がユタ大学に滞在し,分数量子ホール系についてのセミナーを行なうと共に,Sutherlandと1次元量子系についての詳しい議論をした。この中でも,長距離相互作用を持つスピン系での新奇な磁気秩序の可能性を,解析的手法と共にモンテカルロ法を用いて調べる可能性を追求した。 12月には,倉本,川上,加藤がバンガロールのインド科学研究所に滞在した。Shastryはこれに合わせてシンポジウムを企画し,上記4人は主にインドの研究者に対して,それぞれの研究成果について詳しい講演を行なった。シンオジウムの成果を踏まえて,我々4人は広範囲なトピックについて議論を行なった。特に長距離相互作用を持つスピン鎖の厳密な動力学,戸田格子のフォノンとソリトンを内挿する性格,強磁場下の半導体量子ドットの電子状態などについては,集中的な検討を加えた。 2月にはSutherlandとShastryが来日し,関西地区と仙台に滞在した。関西では,非専門家を含む聴衆に対して講演を行なうと共に,川上と議論を行なった。中でも共形場論理の適用可能性について,詳しく意見を交換した。仙台では,倉本が量子多体系についてのシンポジウムを開催し,Sutherland,Shastry,倉本を含む講演者を中心に活発な討論が行なわれた。両分担者は東北大の研究者のみならず,倉本の指導する大学院生とも詳しい議論をした。 本共同研究の成果は,幾つかの共著論文としても発表する予定である。この中には,イジング異方性を有するスピン鎖の磁気秩序に関するものが含まれている。
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