研究課題
国際学術研究
要素問の相互作用が互いに競合しているランダム系(コンプレックスな系と呼ぶ)に固有な現象の一つとしてエイジング現象があげられる。種々のスピングラス物質やスピングラス模型における同現象を中心に、超伝導体中の磁束状態など関連分野の問題について理論(シミュレーションを含む)、実験それぞれの研究で得られた個別的な成果によって、コンプレックスな系におけるエイジング現象の基本的なメカニズム、すなわち、位相空間で見た系の自由エネルギー多谷構造に関して、より深い理解に到達した。本研究で得られた具体的成果のうち主なものは以下の通りである。1)スピングラスの階層的な構造を理論的に特徴付けるパリジ重なり分布関数を磁場中エイジング現象から捉える実験に初めて成功し、同関数の定量的な評価を行った(Orbach)。2)クラスタースピングラスとと通常のスピングラスにおけるエイジング現象の間に特徴的な違いのあることを実験的に明らかにした(伊藤)。3)大規模シミュレーションにより、有限サイズのSK模型におけるエイジング過程を統一的に捉える描像を提起した(高山)。4)数値解析により、3次元ハイゼンベルグEA模型のエイジング現象の解析を通して、カイラルグラス転移の存在を強く示唆する結果が初めて得られた(川村)。5)数値解析により、EA模型のスピングラス相転移の臨界特性が相互作用の分布に依存するという非普遍性を見出した(Campbe11)。6)オンライン学習のための種々のパーセプトロン模型を提起した(西森)。7)重い電子系Ce(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2の基底状態について、フェルミ液体、非フェルミ液体、反強磁性状態の状態間で量子相転移が出現することを検証した(都、Ocio)。
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