研究課題
本研究では、理論化学における緊急の課題として、時間に依存する現象を定量的に扱う理論的手法と分子設計、反応設計を可能にする大きな系の定量的計算法の確立をめざし、電子相関、電子-核相互作用における時間依存アプローチを新たに開発することを目的としている。本年度は、Handy教授を招聘し、時間依存密度汎関数法と電子相関を考慮したエネルギー微分法、それぞれの方法論について、情報交換と共同研究を行った。また、山下、武次がCederbaum教授を訪問し、電子-核相互作用を考慮した波束法と動的反応経路に基づく反応経路モデルの開発についても共同研究を行った。時間依存密度汎関数法は、Handy教授との議論から、従来の方法論の比較的簡単な拡張をすることによって、(電子)基底状態のみならず、励起状態にも適用できる手法が提案され、新たな定式化を行うことができた。また、電子相関を考慮したエネルギー微分法は、多参照摂動論に対して定式化を行い、既に9年度予定のアルゴリズム、プログラム開発の準備段階に入っている。電子-核相互作用を考慮した波束法、動的反応経路に基づく反応経路モデルは、並列計算機・ベクトル計算機に適した高速計算を可能にするような定式化をCederbaum教授と共同で行うことができた。大型abinitio分子軌道計算のための理論・プログラム開発、及び、時間依存多体摂動論についての準備は、現在のところ自国にて別々に行っている。9年度にCarbo教授を招聘し、共同で定式化とプログラム開発を行う予定である。