研究課題
本研究では、理論化学における緊急の課題として、時間に依存する現象を定量的に扱う理論的手法と分子設計、反応設計を可能にする大きな系の定量的計算方の確立をめざし、国内外の研究者との共同研究によって電子相関、電子-核相互作用における時間依存アプローチを新たに開発することを目的としている。特に、時間依存アプローチを行なう上で非常に重要な要素である、化学反応のポテンシャルエネルギー曲面を、高精度かつ高速に構築する理論の開発、構築されたエネルギー曲面上での動的反応経路に基づく反応経路モデルの開発、電子-核相互作用を考慮した波束動力学法の開発を行い、これらの手法を現実の化学反応に適用することを主眼とする研究を行ってきた。Handy教授との共同研究では、時間依存密度汎関数法と電子相関を考慮した多配置摂動論のエネルギー微分法について新たな定式化を行い、同時にプログラムコードも開発した。これによって、エネルギー曲面の高精度かつ高速な構築が可能となった。また、並行して、多次元ポテンシャル面でのトンネル現象を扱う理論も提唱し、多原子化学反応に適用した。Carbo教授との共同研究で、ポテンシャルエネルギー曲面の高速な構築に不可欠な大次元ハミルトニアン行列の新しい対角化法を開発し、アルゴリズムの精度と速度について実証を行った。Cederbaum教授とは電子-角相互作用を考慮した波束法と動的反応経路に基づくポテンシャルエネルギー曲面の構築法の開発について共同研究を行なうとともに、これまで開発した前途の手法を現実の化学反応に適用し、多原子分子の解離気候の解明、蛍光分光への応用等を行った。
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