研究分担者 |
BOSSART R. CERN研究所, 研究員
REICHERT E. マインツ大学, 物理学教室, 教授
HUSMANN D. ボン大学, 物理学教室, 教授
外山 毅 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助手 (30207641)
佐藤 晧 高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (80100816)
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研究概要 |
Bonn大学にある3.5GeVストレッチャー型電子加速器(ELSA)での偏極電子ビーム加速において目覚しい進展を得ることができた。またMainz大学では超格子フォトカソードの性能試験とGDH実験のビーム実験が進行中である。以下にはこの成果を箇条書きにしてまとめる。 (1)偏極電子ビーム源の実用化 このテーマに関しては,当研究室が電子銃の作製の一部を請け負いその完成に寄与した結果,数日間のカソード寿命を持つ約100mAのピーク電流(パルス幅=1μs)を安定的に引き出せた。また当研究室で開発したAlGaAs-GaAs超格子カソードを用い,約68%の高い偏極度をもつビームを入射加速器に供給できた。 (2)ELSAによる加速途中での減偏極共鳴の研究 円形加速器ではスピンを磁場の向きにして加速するがこのとき減偏極共鳴の克服が課題となる。減偏極共鳴は,加速軌道のベータトロン振動数との同期に由来するイントリンシック共鳴と電磁石のセッティングの不完全さに由来するインパーフェクション共鳴に分類される。KEKの外山を中心にこの共鳴の強さがシミュレーション予測がされていたが,今回は偏極電子を加速して実際の減偏極度を測定した。この結果,強い共鳴である2つのインバーフェクション共鳴は完全にスピン反転することにより,また弱い共鳴である高次のイントリンシック共鳴はスピン反転をほとんどせずに,2GeVまで45%偏極度の電子ビームを加速できることを明らかにした。円形電子線加速器においてこのような高い偏極度を達成したのはこの実験が世界最初である。 (3)Mainz,Bonn大学におけるGDH実験準備の進行 Mainz大学ではすでに偏極電子ビームが実用化されGDH総和則の検証を目指す物理実験が進行中である。Bonn大学でもカウンター系の準備が進行中である。 (4)Mainz大学における超格子フォトカソードの研究 Mainz大学が作製した超高速偏極度,強度測定装置を用いて当研究室が作製した超格子カソードから引き出した電子ビームの偏極度と強度の変化をピコ秒単位で追跡する実験が進行中であり,超格子カソードの性能限界を議論する土台となる興味ある最初のデータが得られつつあることを報告しておきたい。
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