研究概要 |
有機金属化合物における金属-炭素結合の開裂は、種々の触媒反応における重要な素過程であるが、その開裂構造および反応性を支配する因子については不明な点が多い。本研究では有機金属ポルフィリン錯体(RMP;R=alkyl,aryl;M=Co,Fe;P=TPP,OEP)に注目し、電子移動酸化に伴う金属-炭素結合の開裂機構およびその反応性を支配する因子を系統的に明らかにした。1.-電子酸化体RMP^+の金属-炭素結合開裂と分子内転移反応RCoTPP^+のESRによる検出や有機基の転移速度定数(K_<mig>)の比較から、RCoTPPの電子移動酸化反応は、まずRCo^<IV>TPP^+が生成し、RからCo^<IV>への分子内電子移動によりCo-R結合が開裂し、有機基の金属中心からポルフィリン窒素への転移が起こることがわかった。また、RFeOEP^+の場合も鉄は4価であり、Rの電子供与性が大きくなるに従い、転移速度は増大した。2.RMP^+の金属-炭素結合開裂に及ぼす軸配位子の効果 PhCoTPP^+では軸配位子の電子供与によりコバルト中心の電子密度が増大し、コバルト中心での一電子酸化が容易になったためフェニル基の転送速度は増大した。一方、MeCN中のMeCoTPP^+ではすでにコバルトは4価であり、軸配位子の電子供与によりMe基から金属への分子内電子移動が抑制され、コバルト-炭素結合が開裂しにくくなり有機基の転移速度が減少することがわかった。3.RCoTPPのコバルト-炭素結合開裂 Co-Rの結合開裂エネルギーはRCoTPP(R=n-Bu,Et,Me)ではRCoTPP^+に比べて大きい、すなわち、一電子酸化によりコバルト4価構造になるとコバルト-炭素結合エネルギーが顕著に減少することがわかった。
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