研究分担者 |
RAUCH Helmut オーストリア国立原子炉研究所, 教授
COSMAI Leona イタリア国立原子核物理学研究機構(INFN)バリ研究所, 専任研究員
CEA Paolo バリ大学, 物理, 講師
PASCAZIO Sav バリ大学, 物理, 講師
大場 一郎 早稲田大学, 理工学部, 教授 (10063695)
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研究概要 |
本研究ではマクロ系やメソスコピック系に対する量子論的理解をその最終目的としているが,その中心的課題はmicro-macro transitionの実現とその物理的,数学的基礎付けにある.特に,量子力学的観測問題及び関連する諸問題に焦点を当てて具体的問題に取り組んできた.今年度の成果としては,1.Nakazato-Pascazioによって提案された可解な力学的模型の,弱結合・マクロ極限における詳細な分析を進めることによって,この量子系に指数関数型の振る舞いをもたらすような確率過程(Wiener過程)が存在すること,またその際Wiener過程をもたらす演算子が測定器系の自由Hamiltonian(Heisenberg演算子)で与えられることが判明した.さらに,この模型においては,確率過程あるいは散逸過程が全Hilbert空間(測定器系+対象粒子系)内の一部分空間に出現していることがわかった.2.量子系の時間発展に関して改めて整理し直し,その振る舞い(時間スケールの短い方から順に,ガウス型,指数関数型,べき関数型)と複素エネルギー平面での解析性について一般的な関係を導出した.3.量子ゼノン効果の検証実験として中性子スピンを利用する実験を提案し,その実現に向けての実験的・理論的検討を行った.4.いわゆるトンネル時間の問題が取り扱いにくいのは,量子論における時間変数が単なるパラメータであるからである.今回,量子論を確率過程によって再現しようというNelsonの量子力学を用いることによって,トンネル領域を通過する量子力学的粒子の数値シミュレーションを実行した.その結果,いわゆるトンネル時間には,障壁の前で停滞するhesitating timeと障壁通過に要するpassing timeという2種類の時間のあることが分かった.
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