研究課題
超伝導スペクトロメーターによる宇宙線反粒子の精密探査は、日米間の国際共同気球実験として平成5年度に第一期の計画がスタートし、これまでに1.2GeV以下の運動エネルギー領域において40イベントを越す宇宙線反陽子の観測に成功している。平成8年度は政府間協定も改定され、第2期計画の初年度として今後の全体的な展望にたって、測定機の性能向上を計り、さらに高エネルギー側までカバーした宇宙線反陽子スペクトルの精密な決定を目指した。その事によって、その起源が標準的な宇宙線伝播モデルによる二次粒子であるか、暗黒物質の候補とされている超対称性粒子の対消滅または原始ブラックホールの蒸発等により生成されるものであるかをつきとめようとしている。本年度の気球飛翔実験はこれまでと同様、カナダ・マニトバ州北部・リンレークにて行なわれ、〜2カ月の現地での準備期間を経て、8月8日にスペクトロメーターが打ち上げられた。機器はすべて順調に作動し、測定機の性能向上等、今後への貴重な基礎データ収集を行う事が出来た。残念ながら、上昇途中で起きた気球本体リ-クの為、測定予定高度に達する事が出来ず、近郊に緊急着地させた為、科学観測実験には至らなかったが、次年度への技術的な見通しを高めることが出来た。カナダでの実験後は、次年度に向け、さらにスペクトロメーターの性能向上に努力している。またこれまでの実験結果の解析を進め、反陽子40例のスペクトル確定、反ヘリウム探索における存在上限比He/He<2×10^<-6>を、これまでの科学観測データのまとめとして公表した。