研究課題
本国際学術研究共同研究により、主に次のような成果が得られた。1)アニオン性高分子としてナフィオンフィルムを用い、塩化カドミウム水溶液に浸してカドミウムを担持させた。このフィルムに硫化水素を反応させて塩化カドミウム(CdS)半導体の超微粒子(直径数ナノメーター)を分散固定化した。その過程でアンモニア処理、熱処理、あるいはチオール処理などにより粒子サイズや表面状態を制御した。このようなフィルムをフェムト秒レーザー(波長400nm)により光励起し、吸収スペクトル変化およびそのフェムト〜ピコ秒ダイナミクスを検討した。2)フェムト秒レーザー照射直後から400〜500nmの波長域で元の吸収が弱くなる過渡ブリーチングが観測された。これは価電子帯から伝導帯に電子がバンドギャップ励起され、CdS超微粒子表面にエキシトンあるいは電子・正孔対としてトラップされたためである。この過渡ブリーチングスペクトルは、大きな(約4.9nm)CdS超微粒子では幅広く、またブリーチングの回復に伴ってレッドシフトした。小さい(約3.5nm)CdS超微粒子で短波長側に観測された狭いブリーチングスペクトルはシフトを示さなかった。また回復速度にもサイズ効果がみられ、小さいCdS超微粒子の方が速い回復を示した。大きなCdS超微粒子ではサイズ分布が広いことも示された。このような結果は、半導体超微粒子の非線形光学効果や光触媒作用の制御に有益な知見を与えるものである。
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