研究概要 |
生体内で活性化されてアルキル化機能を発現するとともに、特定のDNA塩基配列部位に特異的に作用して鎖切断に導く新規プロパルギルスルホン化合物を分子設計および合成し、下記の研究を実施して作用機構を明らかにした。 (1)研究分担者とその協力者1名を京都大学に招へいし、また関連研究を展開中の東京工業大学と東北大学を訪問する機会を設定することにより、プロパルギルスルホン化合物の抗腫瘍活性発現機構および細胞毒性評価に関する研究動向を調査した。この結果、共同研究の展開に有用な知見が集積された。 (2)研究代表者が香港科学技術大学を訪問し、プロパルギルスルホン化合物の分子設計と合成、ならびに天然物を含めたDNA切断活性を有する化合物の構造特性と反応性に関する知見を集積した。 (3)3種類のリ-ド化合物を設計し、大量合成ルートを確立するとともに、23種類の新規プロパルギルスルホン化合物を合成した。また、本研究の過程で1,5-ジイン化合物からアリル二重結合の移動を経てシス-エンジイン構造が発生することを初めて見いだした。 (4)合成開発したプロパルギルスルホン化合物について、DNA鎖に対する認識機能および切断活性を評価し、2官能性のビスプロパルギル化合物よりもモノプロパルギル類縁化合物の方が一般にDNA二重鎖切断活性が大きいことを明らかにした。また、各種置換基として導入したプロパルギルスルホン化合物のDNA二重鎖切断活性序列から、ナフタレンやアントラセンがDNA二重鎖へ挿入するが、挿入方向とアレン型活性部位の相対的な位置関係が切断活性を支配することを明らかにした。 (5)プロパルギルスルホン化合物のDNA塩基へのアルキル化のモデル反応を行い、アレン中間体に1,8-ジアザビシクロー[5,4,0]-7-ウンデセンが付加する新反応を見いだし、DNA鎖切断がアルキル化機能で進行することを示した。
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