研究概要 |
シリコンカーバイト(SiC)は数々の優れた物性を有する広禁制帯幅半導体であり、過酷な条件に耐え得るデバイス用材料として注目されている。京都大学で作製したSiCエピタキシャル成長層は、作製原理の独自性と品質の高さの面で世界的に優位に立っている。物性評価の詳細については、世界的に高いレベルにある研究機関と共同で研究を行うべきであるとの考えから、当該国際共同研究を推進してきた。フォトルミネセンスなど光学的物性面の最先端である、アメリカ合衆国のProf.W.J.Choyke(Univ.Pittsburgh)のグループ、およびイオン打ち込み法と誘起される深い欠陥準位の解析面で優位にあるドイツ国のDr.G.Pensl(Univ.Erlangen)のグループとの間で、過去3年間の間共同研究を続けてきた。測定データの解析と研究計画の設定のための相互訪問、各自の分野の最近の進展の紹介、国際会議や学術誌における連名の論文発表などを通して、斯界の研究発展に寄与してきた。現在、3人が客員編集者として世界的学術誌におけるSiC関連研究の特集号(招待論文数約50、1997夏に出版予定)を進行させている。 本年度の得られた成果は次の通りである。1)結晶成長時の原料ガス比の制御によって、キャリヤ密度が10^<14>cm^<-3>以下の高純度化を達成し、さらに、2)不純物添加により,n型,p型ともに、高濃度キャリヤ密度を得ることに成功した。3)成長層の光学物性、電子物性を測定し、成長層の高品質性を明らかにした。4)結晶成長が基板の面方位に強く依存することを見いだし、成長層物性の面方位依存性を明らかにした。5)イオン打ち込みによるn型、p型電気伝導制御法を確立した。6)酸化膜形成法の確立と酸化膜/SiC界面の電子物性の制御の研究を行い、MOS電界効果トランジスタを試作し、その特性を評価した。7)ショットキー障壁高さを精密に決定するとともに、高性能の整流器を開発する指針を提示した。いずれの研究も、世界の先駆けを行っており、斯界の研究のguidelineを形成していると言って過言ではない。
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