研究課題
本研究代表者らが見い出した、基板表面に予め吸着させた水素の介在によりその上でのエピタキシャル成長が著しく促進される現象である、「水素媒介エピタキシ-」現象は、水素-表面相互作用の基礎科学の観点からのみならず、格子不整合系におけるヘテロエピタキシ-の促進や原子レベルで急峻な界面形成の可能性などからも注目されている。本研究では、水素媒介エピタキシ-機構の原子レベルでの基礎的解明、ならびに、半導体、金属、セラミツクスなど種々の新物質の創製、あるいは水素をトリガーとする自己組織化による量子ナノ構造実現のための基礎データを提供することを目的とした。本年度では、「水素媒介エピタキシ-」現象に対して、原子レベルのメカニズムの解明ならびに、その現象を利用して、表面構造の自己組織化や原子レベルで急峻な界面構造などの応用を試みた。その結果、以下のような新しい事実が得られた。(1)水素媒介エピタキシ-をSi基板上のGeデルタドープ構造の形成に応用した結果、水素の介在により、Geの表面偏析が抑制され、界面急峻性が改善されることが分かった。(2)水素終端Si基板上の金属薄膜のうち、Inなどの系では、むしろエピタキシ-の促進が阻害されており、これが基板表面のダングリングボンドが終端されていることに起因していることが分かった。(3)水素をトリガーとする金属2次元相-金属クラスター自己組織化現象は、金属の結合形態に大きく依存しており、Inなどの系では0次元あるいは1次元的に自己組織化が進行するのに対して、Agなどの系では2次元的に進行することが分かった。これらの結果は、「水素媒介エピタキシ-」のメカニズムの解明の鍵となるものである。
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