研究概要 |
大気中に浮遊するサブミクロンオーダーの微粒子分散系(エアロゾル)は、大気汚染の直接の原因となり、人体への悪影響および地球の温暖化への影響が問題となっている。しかしながら、大気環境中で微粒子が生じる過程として重要な、ガス分子からの粒子化の初期過程の評価は、核生成現象に支配されるために、現在明らかになっていない。そこで本研究では、日本と欧米の研究者の協力により、特に大気汚染現象と関連して重要な、大気中の微量不純物ガスの核生成による微粒子化過程ならびに微粒子とガスの気相中での挙動と沈着過程について調べた。 まず実験的には、NO_x,SO_x,H_2Oなどを含む2〜3成分系のガスからの核生成現象を、放射線源を設置した小容器ならびに断熱膨張装置を用いて検討した。ここではクラスターおよび粒子のサイズ分布の測定等により、核生成速度およびイオンによる核生成の促進の効果が定量的に明らかとなった。また理論的には近代核生成理論に基づいたモデリングによりイオンによる核生成促進の機構を検討し、これにより実験結果を説明することが可能となった。さらに、発生した微粒子の成長過程ならびにガスと粒子の気相中での輸送・沈着現象をモデル化するための、一般動力学方程式と移流拡散方程式を導出した。これらの式を数値計算で解析した結果は、化学反応による粒子の生成実験や、ガスおよび微粒子を浮遊させた空間を用いた実験の結果をうまく説明できた。以上のことより、本研究の実験と理論的検討で得られた成果は、環境中の微粒子の影響を評価する数理モデルを構築するのに有用であると考えられる。
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