研究課題
国際学術研究
低品位炭の有効利用はエネルギー源の分散活用、エネルギー単価の低減のために有利であると考えられ、多くの研究がなされて来た。しかしながら、山元での利用は地理的な制約からその使用量に制限があり、大量の利用を考えるとするならば安全で安価な輸送とハンドリング技術の確立が必要である。低品位炭の中でも石炭化度が低く、揮発分の含有量が多い亜炭、褐炭などは埋蔵量が多く低価格にもかかわらず、自然発火性が高いこと、水分含有量が高いことなどのために遠隔地まで輸送して利用する量が多くないのが現状である。乾燥により水分を除去し、更に300〜400℃程度の熱処理をして表面改質をし、一部タールコーティングを行なう方法が乾式の改質プロセスとしては最も徹底した方式であると思われる。本研究では、神戸大学・山口大学のグループが真空乾燥とタールコーティング組み合わせプロセスにより低品位炭の改質を行ない、実用可能なコストでの改質が可能であることを示した。また、インドネシアのバンドン工科大学では低品位炭の過熱水蒸気とタールコーティング組み合わせプロセスにより行い、低コストで実用規模の改質炭を得ることが出来ることを示した。しかしながら、このような方法で改質したものでも、自然発火性が完全に押さえられるたという報告は少ない。(自然発火性の評価が困難なことにも起因するが)乾式で改質した低品位炭を水スラリーに使用することは、一度蒸発させた水分をスラリーの溶媒としての水として系に加えることとなり、スラリー製造プロセスと組み合わせた全体の製造コストの評価が重要となる。このようなトータルシステムの経済性評価は今後の残された課題である。石炭-水スラリーを製造することを前提として、湿式の改質プロセスも開発されてきた。これは水分を蒸発させずに水と石炭が共存した状態で300〜400℃程度に温度を上昇させ、低品位炭の表面改質を行なおうとするものである。このような方式は水熱処理プロセス(HWD;Hot Water Drying Process またはHTD;Hydro-Thermal Dewatering Process)とよばれる。HWDプロセスは各国で開発されているが、本研究グループでは鹿児島大学とMonash大学が担当して研究を行なった。鹿児島大学では高温高圧の改質反応器で低品位炭の改質を行ない、その表面特性がどのように改質されるかを明らかにした。また、Monash大学ではHWDにより改質されたものを、もう一段階機械的圧縮により改質を行なうプロセスを検討した。その結果得られる改質炭-水スラリーの高濃度化が可能となることが示された。改質炭のスラリー化用添加剤については山口大学・神戸大学のグループが広範囲の添加剤について検討し,改質炭用の添加剤選定指針を与えた。しかしながら、改質方法により表面特性は大きく異なるので、それぞれの改質プロセスの適応した添加剤の検討が今後も続けられるべきである。
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