研究課題
国際学術研究
本研究では中国大陸東北部の玄武岩質火山に発達する地熱系に関する研究を行い、以下のような結果が得られた。1.中国東北部の地殻熱流量に関する研究からは、玄武岩の融解が生じる深度は70-150km深程度の上部マントルであり、このような深度に玄武岩マグマが存在しても、地殻浅部に熱水対流系を駆動することはできない。また、熱史の研究からも、100Ma以降、地殻が特に高温化した証拠は認められない。2.長白山火山には比較活動的な地熱系が発達し、その地熱系を維持するためには、マグマから放出されたの流体の関与の必要性が明らかにされた。伊爾施火山地域には小温泉・阿爾山温泉という小規模な地熱系が発達していることが明らかにされた。しかしながら、小温泉・阿爾山温泉地域では、マグマなどの特別な熱源を想定する必要性はなく、正常な地温勾配のもとで、天水が地下に浸透し、暖められ、地殻深部にまで到達している断層のような高い透水性の地層を上昇して来たものと推定された。また、ごく最近(1719-1721年)噴火活動を行っている五大連池火山周辺には何ら地熱系の発達は見られない。以上のように、各々の玄武岩質火山ごとに地熱系との関わり方が異なっていることが明らかになった。伊爾施火山と五大連池火山の場合には玄武岩質火山に直接関連した地熱系の発達はないと結論することができる。一方、長白山火山では地殻浅部のマグマからの流体の関与によって地熱系が形成されていることが推定された。しかしながら、この地熱系は直接玄武岩質マグマにより形成されたものではなく、地殻に貫入した玄武岩質マグマの加熱により形成された、粘性の高い粗面岩およびアルカリ流紋岩質のマグマの存在によって地熱系が形成されたものと考えられる。
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