タンパク質の機能を理解する上で、構造的な知見は必要不可欠である。NMR法は、補欠分子族を含むタンパク質の溶液状態での微細構造解析に非常に適している。そこでNMR法によりFMN結合タンパク質の詳細な構造を解析することによって、FMN結合タンパク質の立体構造を決定し、その酸化還元電位や結合定数といった物理化学的性質とその構造の相関を解析した。 同位体ラベルしていないFMN結合タンパク質及び^<15>N又は^<13>Cさらにその両方でラベルしたFMN結合タンパク質の構造解析の結果、このタンパク質の高次構造は、従来多数報告されているFMNを結合しているタンパク質の1種のフラボドキシンとはかなり異なっていることを明らかにした。すなわち、唯一フラボドキシンとアミノ酸配列上相同性があった^<31>Thr-Trp-Asnの領域は、フラボドキシンにおいてはFMNとの結合に欠かせない領域であるが、FMN結合タンパク質においては、その結合領域からやや離れて存在していた。一方、芳香族アミノ酸がFMNから一つの面をなすように配置しており、この事が、このタンパク質の酸化還元電位や反応性などに影響していることを示唆した。また、リン酸基は、フラボドキシンの場合、分子内部の数個のペプチド鎖原子との相互作用が報告されていたが、FMN結合タンパク質においては、タンパク質表面に露出していた。一方、部位特異的変異法により作成した部分改変体も、これらの結果を支持した。すなわち、^<32>Thr残基はFMNとの結合に対して、特にそのかさ高さの点で重要であったが、^<31>Thrや^<33>Asn残基は、その結合にはそれほど重要ではなかった。また、酸化還元電位は全ての改変体で大きな違いはなかった。今後、FMNを結合するための最小領域ないしはその活性発現決定領域を決めるといった方向に研究を展開していきたいと考えている。
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