研究課題/領域番号 |
08044192
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究分野 |
生態
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原 登志彦 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (80183094)
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研究分担者 |
HERBEN Tomas チェコ科学アカデミー, 植物学研究所, 研究員
KRAHULEC Frantisek チェコ科学アカデミー, 植物学研究所, 所長
鈴木 準一郎 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (00291237)
STORCHOVA Helena チェコ科学アカデミー, 植物学研究所, 研究員
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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キーワード | クローナル生長 / DNA-RAPD / 山地草原 / 種多様性 / 個体群維持機構 / チェコ共和国Krkonose山 / 個体群動態 / 集団の遺伝的構造 |
研究概要 |
チェコ共和国Krkonose山における山地草原で主要な草本植物種(いずれもクローナル草本)であるAnthoxanthum alpinum,Deschampsia flaxuosa,Nardus stricta,Festuca rubraの生長、死亡、繁殖の動態とその個体(genet)のサイズと空間分布を調査して、クローナル草本植物群集の多様性維持機構を理論モデルにより研究した。7月に調査地で合計約2000の葉のサンプルを採集し(各種約500サンプル)、DNAを抽出し、DNA RAPDによりこれらのサンプルの個体識別を行った。Festuca rubraでは、1m^2当たり約450-750genetsが確認された。genetの平均サイズは約22cm^2であった。地下茎のクローナル生長率は0.2-0.3/yearであった。また、シュートの死亡率も0.2-0.3/yearであった。genetの出生率を調査地で非破壊的に測定するのはほとんど不可能である。そこで、我々が開発したクローナル植物の空間生長モデルにより出生率の推定を行った。その結果、毎年1m^2当たり4-10の新しいgenetが生まれると、Festuca rubraの個体群は安定的に維持されるということが判明した。調査地で得られた地下茎のクローナル生長率とシュートの死亡率はあまり大きな変動を示さなかった。毎年の環境変動の影響を最も強く受けるのはgenetの出生率であると考えられる(芽生えたばかりの個体の死亡率は非常に高いので)。地下茎のクローナル生長率とシュートの死亡率が上記のような値の時、毎年のgenetの出生率が大きく変動しても(4-10)個体群は安定的に維持されるという、個体群の維持機構がFestuca rubraに働いていることが判明した。また、Festuca rubraの生長動態は、その周りにいる植物の種構成や他種の現存量、つまり種間競争にはほとんど影響されず、むしろFestuca rubra自身の遺伝的な変異による生長動態の変異のほうが顕著であった。従って、群集動態を理解する上で集団の遺伝的構造を解明することは非常に重要である。
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