研究概要 |
味覚は舌上皮上にある味細胞によって感知される.その感知機構は味細胞膜上にあるチャネルに味物質が直接作用する場合と受容体に作用する場合が考えられる.うま味受容に関して現在明らかになっていることは官能検査や行動学的研究から1.動物種や同じ動物種でも系統によってうま味の受容が異なる,2.うま味物質にはアミノ酸系(グルタミン酸やアスパラギン酸)と核酸系(イノシン酸やグアニル酸)が知られている,3.アミノ酸系とグルタミン酸系の間に感知閾値や感知強度の相乗効果が見られること、などである. 前年度の結果から,少なくともL-AP4,NMDAタイプの複数のグルタミン酸受容機構を味細胞は持っていることがわかった.この成果を,国際シンポジウム(International Simposium of Olfaction and Taste)が米国において開催されたため林・松本・呉が渡米し研究成果の発表を行うと共に,国外グループと綿密な打合せを行った.そして両国が連絡を取りながら論文作成にむけて追加的な実験を行った.本年度に実施した実験はパッチクランプを用いてうま味受容時の膜電流・膜電位変化を測定し,MSG応答時に関与するイオンとチャネルについて調べ,複数のグルタミン酸受容タイプに関わるイオンチャネルのイオン選択性について明らかにし,日本味と匂い学会大会で発表した.その後,うま味に関して研究の盛んな,日本味と匂い学会大会における情報を収集・および研究打ち合わせにRawson博士が来日した.そして,論文作成のために林・呉が渡米し,うま味受容に関する情報を集めるとともに共同研究者と研究成果の国際誌への公表について打ち合わせを行った.
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