研究概要 |
出芽酵母(S.cerevisiae)の染色体DNA複製開始の制御にCdc7/Dbf4 protein kinase複合体が必須である。このprotein kinaseの細胞内の基質を明かにするため、CDC7及びDBF4を組込んだバキュロウイルス感染昆虫細胞SF-9よりCdc7/Dbf複合体を精製し、DNA複製ライセンス因子であるMcm蛋白群の1部が特異的にリン酸化されることを明かにした。一方、Dbf4蛋白は複製開始因子の1つであるORC複合体を介し、複製開始部位に結合することが知られているが、改めてORC複合体はCdc7/Dbf4protein kinaseでリン酸化されないことを確かめた。更に同様にcdc7-1またはdbf4-1を組込んだバキュロウイルス感染細胞より突然変異を持ったCdc7-1/Dbf4またはCdc7/Dbf4-1複合体を精製し、Mcm蛋白群のリン酸化反応が温度感受性を示すことを明らかにし、Mcm蛋白群が細胞内でCdc7/Dbf4 protein kinaseの基質となっていることを強く示唆した。一方、新たに染色体DNA複製開始に関与する遺伝子産物としてMcm10を同定、精製し、この産物が特異的に1本鎖DNAに吸着する性質を持っていることが明かになった。またmcm10-1変異株に於ける染色体DNA複製開始反応が高温下では複製フォークの進行が1方向だけ特異的に阻害されていることを明かにした。 Leading鎖合成の主役をなしていると考えられるDNAポリメラーゼε複合体と相互作用していると考えられる蛋白を同定する目的でdpb2-1及びdpb11-1変異と合成致死となる変異を単離した。その結果、Sld2,Sld3,Cdc45,Sld5,Rad53蛋白が直接的または、間接的にDNAポリメラーゼεと相互作用していることを明らかにした。このうちdpb11-1,sld2-6やcdc45温度感受性変異株では染色体DNA複製開始反応が温度感受性になっていることからDNAポリメラーゼεを始めとしてこれらの遺伝子産物が複製開始反応に重要な働きをしていることが明らかになった。
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