研究課題
国際学術研究
ナス科やバラ科植物に見られる配偶体型自家不和合性では、雌しべのS遺伝子産物がRNaseT_2型のリボヌクレアーゼ(S-RNase)であることが確認され、トランスジェニック植物を用いた研究から不和合性にはRNase活性が必須であることが示された。しかし、S-RNaseと作用する花粉側のS遺伝子産物はまだ発見されず、自家不和合性の分子機構は依然解明されないままである。本研究は、ナス科タバコおよびバラ科ニホンナシのS-RNaseのX線結晶解析を行い、立体構造を明らかにして、S-RNaseが介する不和合性機構を分子レベルで解明することを目的とする。タバコS1-RNaseは共同研究者であるオーストラリアメルボルン大学クラーク博士の協力により、タバコ10,000花より50mgの精製標品を得た。この標品を用いて、ハンギングドロップ蒸気拡散法により約150種の結晶化条件をスクリーニングした結果、沈殿剤としてPEG-6000を用い、pH6.0、蛋白質濃度12mg/mlの条件下で、X線結晶解析に適した結晶を得ることに成功した。初期的なX線実験の結果、得られた結晶は単斜晶系に属し、空間群P21、a=80.3Å、b=77.9Å、c=68.3Å、β=90.0^。と決定され、原子レベルでの構造解析が期待できることが判明した。回折強度測定はイメージングプレートを用いた高速回折計で行い、native結晶に関して2.7Å分解能までの回折強度データを収集した。重原子同型置換法による立体構造解析を行うために、種々の重原子誘導体結晶をソ-キング法で調整したところ、水銀原子のソ-キングに成功した。現在、もう1種類の重原子誘導体結晶の調整を検討している。
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