研究分担者 |
TUMENNASAN H モンゴル科学院, 総合実験生物学研究所, 所長
高瀬 尚文 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助手 (20263444)
平塚 和之 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (30202279)
並河 鷹夫 名古屋大学, 農学部, 教授 (70111838)
CHANDLEY Ann 英国医学研究機構, 人類遺伝学部, 部長
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研究概要 |
雑種生物は相同染色体の対合と交叉がうまく進まず、生殖細胞形成に失敗するため、雌雄ともに繁殖出来ない例が殆どである。モンゴル国の重要家畜であるヤクとウシの雑種では雄だけが不稔となり雌は稔性をもつ。性染色体以外は雌雄に染色体/遺伝子には差がないと考えられるので、性による稔性差は遺伝子そのものより生殖細胞形成過程に原因を考え、その由来を探究した。ヤクとウシのF1雄では厚糸期を中心に減数分裂崩壊が観察され、精細管内は空洞状であり、精子細胞はまれにしか観察できなかった。即ち多くの異種間雑種やX-A転座個体に一般的な厚糸期或いはそのすぐ後のステージで起る細胞死が誘導されていると考えられた。厚糸期までの精母細胞に対して、減数分裂前期特異的に発現する遺伝子(^*LIM9,10,13,15,18)の蛋白質に対する抗体を用いてウエスターン法、FISH法により解析をした結果、これらの遺伝子産物の発現の時期と量に関して、ヤク、ウシ、雑種(F1,F2,F3)の間に差は見られず、電子顕微鏡観察によるシナプトネマ構造(SC)、核構造等にも注目すべき差がなく、此処までの過程は正常に進んでいるものと考えた。稔性を持つ雌の卵巣および卵母細胞には、ヤク、ウシ、その雑種の間に差を見出せなかった。今後の問題として、雑種雄の減数分裂崩壊の誘導因子の探究が残された。戻し交配による稔性回復はこの因子を物質として分子生物学的に捉えうる可能性を示唆している。 本研究はモンゴル国の畜産育種経の応用と、減数分裂の基礎研究に貢献するものである。(*オリジナルにはユリ花粉母細胞より分別ハイブリッド形成法により単離されたが、その後高い保存性が示されつつある)
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